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2022年 伝統建築領域 井上(年)研究室の活動

  •  伝統建築領域の井上(年)研究室では、伝統建築の保存・活用・継承に向けて実証的・実践的な研究を行っています。

 ひとりひとりが各々完結したテーマを定めてまとめていきますので、研究室の人数分だけテーマが設けられます。

 ただし、一つのテーマに対し、みんなで一緒に協力しあって複数の調査に参加できるようにしています。

 その中でも今回は4つほどのテーマをご紹介させていただきたいと思います。

 

1 京都府登録有形文化財 生身天満宮拝殿調査

 生身天満宮は京都府南丹市園部町に所在し、菅原道真の存命中の創建であることから「生身天満宮」と称される「日本最古の天満宮」です。

 KYOBIが創立から5年目までは園部にあったことから、実習などでもお世話になり、そのご縁で拝殿の調査をさせていただけることになりました。

 この建物は経年劣化による損傷が激しく、修理工事が予定されていました。

 そこで、まずは、2年前の2020年に当時のゼミ生と2年生(現在のゼミ生の学年)とで実測調査を行い、現状図面を作成しました。

2020年度の事前調査の様子。現状図面を作成しました

そして、2021年12月より修理工事が始まりましたので、教員の指導の下、研究室で工事中に調査をさせていただいています。

 学生時代にこのような調査に携われる機会は滅多にありませんので、非常に良い経験になっていると思います。

 工事中の調査は建物の内部構造や今までの改修履歴などが調べられる良い機会です。

 生身天満宮拝殿でも様々な発見がありワクワクしながら調査を進めています。

調査の様子。改修の履歴や木材の仕上げ方法、狛犬の台座に刻まれた文字などを記録しました。(作業は工事の合間に行っています)

2 Y邸調査

 Y邸は下鴨神社の北側に所在し、京都市電が開通しこの辺り一帯が開発された後に建設された所謂「近代近郊住宅」です。

 昭和16年(1941)に建設され、その後に数度の改修を受けながら現在も住宅として使われています。

 この調査もゼミ生が協力して進めています。

 また、Y邸の住人であるY先生のゼミ生も調査や見学を一緒に行っています。

 伝統構法により建設された住宅が現在の住宅の構法へ変化していゆく過程が窺える貴重な建物であることがだんだんとわかってきました。

 これからも様々な発見や気付きを求め、調査を進めていきたいと考えています。

建物そのものももちろん、建設された時代背景や建物とお庭との関係、隣接建物との関係などなど、住宅建築の歴史を調べるにあたって重要な要素が含まれています。Y邸の住人であるY先生とゼミ生も一緒に記念写真を撮りました。

 

3 北野社(現 北野天満宮)周辺の芸能空間

 北野社周辺、特に南門前は歌舞伎や落語の発祥の地ともいわれ、古代から中世、近世を通して様々な芸能が「中之森」や「下之森」という広場で開催されていました。

 また、京都市中でも最大級の規模の勧進能場(歌舞伎劇場)も建てられていました。

 学問の神様として有名な北野天満宮は、かつては京都でも有数の遊興地(レジャースポット)だったのです。

 また、東門前は「上七軒」という花街があり、現在でも歌舞練場という劇場建築があります。

 花街には茶道、華道、香道や舞、和歌などの様々な芸能が受け継がれています。

 これらは礼儀や所作に作法があり、教養も求められ、今となっては日本の伝統文化と位置付けられています。

 北野社周辺は単なるレジャースポットではなく、これらのような日本の伝統文化を受け継いだ空間が息づいています。

 この地における芸能空間はどのようなものだったのか。

 その再現を試みようとする研究は成果が非常に楽しみです。

北野社の南・東門前を視察し、上七軒歌舞練場で寿会を鑑賞。かつての花街と芸能空間をイメージしました。

4 Machiya Visionシンポジウムに参加して

 京都には「京町家」という建築が多数あります。しかし、現代ではライフスタイル・ビジネススタイルの変化や少子高齢化、建物の老朽化や耐震性の問題などにより、その存続が危ぶまれています。

 そこで、京町家の重要性やその良さを訴え、保存・継承を計ろうと様々な取り組みが行われています。

 「MACHIYA VISION」は、公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターとKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭がコラボレーションし、京町家の未来へのビジョンを発信するプロジェクト、展覧会です。

 この企画においてシンポジウムが開催されたので、ゼミ生+卒業生とで拝聴し、町家を活用したKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のいくつか会場を見学してきました。

 町家を保存・継承するための貴重なお話を伺い、様々な取組に触れ、今後の研究を深めることができそうです。

Machiya Visionの会場の一つ「八竹庵」とKYOTOGRAPHIEの会場の一つ「嶋臺」。何れも素晴らしい文化財の町家です。

 

5 週1で報告会!たまに懇親会!

 以上のような様々な調査やフィールドワークを卒業研究としてまとめていきます。

 研究室では、毎週それぞれが作業の進捗状況や新たに解ったことなどを報告します。

 これで自分が関わっていないことでも他の人がやっていることの内容を把握し、情報が共有できます。また、一緒に調査をしている人はよりよい工夫なんかも提案できます。

 また、懇親会も大事な研究室活動の一環です。

 感染症の拡散防止に気を付けながらスムーズなコミュニケーションを心掛け、みんなで一致団結してよりよい制作を仕上げ、充実した学生最終年度を過ごしてもらえたらと考えています。

(准教授 井上年和)

 

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