江戸から令和

痕跡辿

Interview

京町家保全・継承に関する研究
〜先斗町すき焼き屋いろは北店の事例考察〜

2021年卒業制作展 佳作

2021年度 建築学科卒業

郡田 果奈さん

Section 1

Outline

“卒業研究の内容について
教えてください”

実家が昔ながらの日本家屋でもともと木造建築が好きでしたが、大学入学を機に京都で一人暮らしをはじめたことで自然と興味の対象が京町家へ。そこで、卒業研究でも京都市中京区先斗町のすき焼き屋「いろは北店」の事例をもとに京町家の保全・継承について研究を行いました。京町家の保全と継承に関する政策の調査、「いろは北店」の現状の図面の作成、図面や室内のしつらえから建築的特徴の分析を実施しました。

そのうえで柱の状態や痕跡からエリアごとに改修時期を調査していくと、「いろは北店」には建設当初の江戸時代後期から大正、昭和、平成まで計5期の部材が使われていることがわかりました。長年受け継がれてきた部材やしつらえといった「歴史的価値」と、改修を重ねて新たに加えられた「付加価値」が混在していることが京町家の「建築的価値」であり、その価値を高めていくことが京町家の保全と継承につながるのではないかと思います。

Section 2

Focus

“苦労した点や
こだわった点は?”

研究を通して最も苦労したのは図面の作成です。構造が複雑なうえ、営業中の飲食店に協力いただいているため、週に一度の限られた時間で店内を計測する必要がありました。ゼミの仲間にサポートしてもらいつつ、図面が完成したのは着手してから半年後でした。それだけ時間をかけてでも研究に没頭できたのは、京町家の魅力を一般の方に伝えたいというモチベーションがあったからです。

研究テーマを決めた当初、先行研究を調査したのですが、地域で使われている京町家に関する研究の少なさに驚きました。そのため、私の研究が何かしらのかたちで役立てられたらという想いがありました。プレゼンテーションボードを作成する際にも専門的な内容ではなく、京町家に住んでいる人やこれから住みたいと思っている人向けにわかりやすくまとめるよう心がけました。

Section 3

Objective

“卒業研究を通して
学んだことと
今後の目標を教えてください”

卒業研究を終えた今、京町家という自分の好きなテーマを思いきり研究できて楽しかったというのが率直な感想です。また、先生方からのフィードバックで「事例が少ない研究テーマだから価値がある」、「地域の方々に貢献できる」と評価していただき、とても嬉しかったです。これまで学んできたこと、これからやっていきたいと考えていることが間違っていないと自信をもつことができました。

卒業後は地元の滋賀県に帰り、建築事務所で働きます。入社1年目からお客様の理想とする家を建てるのが今の目標です。そして、京町家にも関わり続けていきたいです。将来的には京町家の賃貸や改修などにも携われたらと考えています。

※こちらのインタビューは2022年3月時点の内容です。

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