◆ #02

設計とは“寸法”を決めること
古い伝統建築の新しい研究

OUE / Lab

大上研究室

お寺や神社、民家など日本の伝統建築の設計技法、古建築の各部材の寸法がどのような設計原理によって決定されているのかを研究します。一級建築士・文化財建造物修理主任技術者として、長年文化財建造物の保存修復の設計監理に携わってきた大上先生の解説のもと、文化財修復現場を訪ねたり、近隣の神社で実測のための図面制作に取り組むなどフィールドワークも実施。さらに、伝統建築の設計技法を現代に活かすべく、コンピュータスキルの習得にも力を入れています。

◆ Research Content 01

例えば、10円玉に描かれていることで有名な平等院鳳凰堂。その設計はどんな工程でなされたのか。実は、鳳凰堂の内部に納められた阿弥陀如来坐像に秘密がある。阿弥陀様の高さはなんと床から台座までの高さとぴったり同じ。もう1体阿弥陀様を上に重ねてみると天井までの高さとぴったり。もう1体、つまり計4体の阿弥陀様を積み重ねると棟木の下とぴったり。さらに阿弥陀様が横に6体並ぶと柱の内側とぴったり。
これだけの「ぴったり」が散りばめられているのは偶然ではない。日本各地のお寺は仏像の寸法に合わせてつくられており、この部分の寸法が決まったから、次の部分の寸法も決まるというふうに順を追って設計されているのだ。では、最初に決めるのは一体どこの寸法なのだろう。
それはまだわかっていない。大上先生は古建築の設計技法をもとにその謎を解き明かす研究に取り組んでいる。

◆ Research Content 02

◆ Research Content 02

先生は自身を「天邪鬼な研究者」と表現する。昭和30年代以降にできた日本建築史が再検証されることなく常識とされ、学会での発表も減っていく中、先生はその“常識”の真逆をいく。
これまでとまったく違う見方、プロセスで研究していくと伝統建築は非常にシンプルな原理でできているということがわかってくるのだとか。例えば、平等院鳳凰堂は阿弥陀様のための建物だから、阿弥陀様の寸法をもとに設計されたのではないかと考えるのは自然なこと。「この建築の寸法はどうやって決まったのか」、「自分だったらこう決めるかな」。
そんなふうに先生は日々仮説を立てて検証を続ける。すると、一見完成された日本建築史にもまだまだ新たな発見が出てくるのだ。

◆ Research Content 03

先生が今注力しているのは、鎌倉時代の建築様式「大仏様」の黄金比の研究。黄金比とは、人が目で見てもっとも美しいと感じる比率のこと。
東大寺南大門、浄土寺浄土堂、醍醐寺開山堂などの「大仏様」も黄金比でできている。しかも、驚くことに大きさの異なるこの3つのお寺の縮尺を均等にすると、同じ枠内に収まるのだ。
本殿と拝殿、門や本堂、三重塔、それらすべてが一定の比例によってつくられていることがわかる。「中世の大工には根拠のない寸法はありません。何かしらの根拠があり、結果としてバランスのいいデザインになっているんです」。
その根拠を探ると同時に遺跡の復元にも携わる。「平面がわかれば高さがわかる」という比例や寸法のルールを熟知しているから、先生は復元に絶対的な自信をもつ。研究室ではCGで遺跡の復元に挑戦する学生も少なくない。今はない建築物を最新技術で蘇らせるなんてロマンを感じずにはいられない研究だ。
“その寸法はどうやって決まったのか”。その空想からすべてがはじまる。「天邪鬼な研究者」は「空想建築家」でもあるらしい。

Naoki Oue

大上 直樹 特任教授

Profile

博士(学術)・一級建築士・文化財建造物修理主任技術者(文化庁)・建築基準適合判定資格者。
芝浦工業大学卒業、同大学院工学研究科修士課程修了、大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程満期退学。
滋賀県教育委員会文化財保護課勤務を経て長年文化財建造物の保存修復の設計監理に携わる。専門は日本建築技術史。
著書「日本建築規矩術史」(中央公論美術出版)、文化財建造物修理工事報告書12冊ほか。

もっと知りたくなったらOCへ