◆ #03

古代ローマから現代京都まで
建築学の可能性は無限大

YASUDA / Lab

安田研究室

フィールドワークを通して、身近な環境における様々な問題点を発見し、建築によって解決する方法をディスカッションします。中でも一番の特長は学生たちの研究テーマの多様さ。社会問題や自身が惹かれるモノ・コトなど、建築以外の興味関心も活かし、建築学の裾野を広げていきます。先生自身の海外での経験や事例を踏まえ、学生一人ひとりの良き伴走者として最適解をともに模索します。

◆ Research Content 01

広大な敷地に建てられた古代ローマ住宅。その中庭には立派な列柱が並ぶ。ところが、よく見るとその間隔は均一ではない。災害や経年劣化でずれたわけではなく、そもそもランダムに建てられているのだ。建築の秩序でいうと絶対的に等間隔で並んでいる方が安定した構造になるのに、なぜあえてずらしてつくったのだろう。その答えは、室内あるいは玄関から中庭を眺めた時の美しさにある。
見る者の視線を考え、リスクを冒してでも美を追求したのだ。

安田先生が研究するのはそういった古代ローマ住宅の建築と視覚の関係性。外観や内装が重視される現代建築と同じように、2000年前の古代ローマ人も視覚効果を計算して設計していたことに驚かされる。
「もちろん技術力は今とは違いますが、現代の建築家と同じ想いや感性をもっていたのではないでしょうか」。

◆ Research Content 02

◆ Research Content 02

先生は京都府長岡京市出身。長岡京が近くにあり、曰く「土器が道端に普通に落ちているような環境で育った」そう。そんな背景もあって先生が最初に志したのは考古学の研究だった。最終的に建築の道に進んだものの、考古学への興味は原点といえる。だからこそ、学生にもたとえ建築と無関係に思えても自分が感じたもの、興味をもったことを研究に活かしてほしいと話す。
一人ひとりの中にある興味やメッセージ性といった本質的な衝動が研究の原動力となる。先生が担うのはあくまでもサポート役。だから、決して批判や否定はしない。原点を忘れそうになっていたら引き戻してくれる。研究室には先生の「ここがいいね!」、「ここはもっと良くなるんじゃないかな?」という穏やかな声が響く。
そうして、学生たちは時に悩みながらも自らの力で技法だったり材料だったり概念だったり、何かしらの解決策と出会い、誰も想像していなかったかたちに仕上げていく。

◆ Research Content 03

安田研究室のフィールドワークは卒業研究のテーマとそれに応じた場所・敷地を探すのが目的。もしくは先に場所を見つけて、ここに何をつくろうか考えるという逆のパターンもある。ゼミ生みんなで外へ出ると、必ず誰かが何かを発見する。その都度みんなで議論し、その場所特有の問題点を探っていく。そして、社会との接点を現場で見つける。「フィールドワークで大事なのは、今その瞬間の営みを感じること。植木鉢の位置が変わったとか、そんな小さなことでも1ヶ月経てばまちは変わるんです」。
先生自身もミラノで暮らした8年間、周囲の家がどんな植栽を置いているか、どんな動物を飼っているのか興味深く観察していたのだとか。
人の住み方や認識が変われば条例が変わり、それによってまちの景観も変わる。
まずは身近な社会を知ること。「宝物は意外とすぐそばにあるんですよ」と先生は言う。KYOBIから少し歩けば、歴史あるまち並みも鴨川も京都駅周辺の近代的な建築も見られる。
宝探しのフィールドワークには絶好の環境だ。

Teruo Yasuda

安田 光男 教授

Profile

博士(学術)・一級建築士・イタリア政府公認建築士・建築基準適合判定資格者・宅地建物取引士。
東京大学工学部建築学科卒業。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科修了。(株)伊東豊雄建築設計事務所での勤務を経て、文化庁新進芸術家海外留学制度にて渡伊。
ミラノにて建築設計、インテリア・プロダクトデザイン、古代ローマ住宅研究に携わる。Yasuda Architetto Studio代表、日本文理大学客員教授を経て現職。
邑楽町役場庁舎設計競技入賞、鬼石町多目的ホール設計競技佳作、Vignola 市Astambein 設計競技2等(共同設計)など受賞多数。共著書として「僕たちは何を設計するのか―建築家14人の設計現場を通して」(彰国社)。

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