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建築学部

人見研究室の紹介 2023

こんにちは、建築学科の人見将敏と申します。暑い日が続きますね。皆さま体調に気をつけてお過ごしください。

それでは当方の研究室の紹介をはじめます。研究室では主に建築設計や建築論を専門としており、特に建築の意匠・デザイン面に着目しています。建築設計では、建築を「考え」「手を動かす」という設計を行う上で当たり前なのですが重要なことを大事にしたいと考えています。また建築論では、そもそも建築論とは簡単に言うと建築とは何か?どうあるべきか?を考える学問で、建築論の中にも色々な種類があるのですが、特に、作家論という、過去の一人の建築家もしくは複数名からなる建築家集団を対象に、その人物の人となりや生きた時代背景を含めて建築等の作品・活動を分析する研究を行っています。その分析を通して現代の設計やものの見方にフィードバックできることを探っています。

今年度の所属学生数は学部4年生9名です。活動の方針として、基本的にそれぞれの関心をもとに進めていくというスタンスでいます。自身の関心の持つ事柄・身の回りのものごとを深く掘り下げることで、大学生での卒業設計・卒業論文を超えて、もう少し先の、10年後・20年後の自分や社会につながってほしいと考えるためです。ただそのために、歴史・過去を参照することやものごとの連関を可能な限り捉えることを大切にしてほしいと所属学生には折に触れて話しています。

基本的な考えは毎年あまり変わりませんが、今年度は上記に加え、「素材(感)」に対する視点も大事にしてほしいと思いながらゼミを進めています。自身の身近な問題ないし社会の問題を扱う際に、建築を通して解決できない問題はたくさんあります。それでも建築を通してそれらに何らかのアクションを行いたいという時に、実感のある「モノ」、そしてそれをつくりだす「素材」に目を向けられる姿勢が身についたら、彼らが貢献できることを自分自身で見出しやすくなるのではないかと考えたためです。

前置きが長くなりましたが、前期のこれまでの活動を簡単に触れます。前期は、数冊の本を輪読し、その後、自身で読みたいと思う本を選び、そこから後期の卒業設計・論文(ないし大学院での研究)で扱いたいテーマにつなげていく、ということを行っています。

1冊目は、毎年共通で、『都市と建築の解剖学 形態分析によって「設計戦略」を読む』(ジェフリー・H・ベイカー著、富岡義人訳、鹿島出版会、1995年)を読むことにしています。建築や都市・場所の見方や読み方、図での表し方とそれに関わる言葉に触れます。2冊目に選んだ本は、『見えるかたち 適応型再利用/大学空間/かたちと構成』(市原出著、建築資料研究社、2023年)と、『吉阪隆正パノラみる』(アルキテクト+北田英治編著、Echelle-1、2022年)です。2グループに分かれそれぞれ学生が選び、読み解きました。前者は建築論(意匠論)に関連しつつ建築空間の美しい写真から空間構成と素材のあり方等を学び、後者では吉阪隆正による作品・表現の豊かさだけでなくユーモラスかつ現代にも通じるものごとの見方を得ました。3冊目は、個々の学生が自身の興味に基づき選び出します。自身の出身地と関係のある中山間地域の現状と問題について書かれた本や、高校生の時から行っているアイスホッケーや吹奏楽に関する本など、建築に関わる関わらない関係なく選んでもらい、それをまとめたものを発表してもらいました。中には選びきれない学生もおり、その場合は、まず卒業設計で扱おうと思う地域・場所を決め、そこから話を紡いでいき、テーマや問題点を見出してから再度本を探す、ということにしています。

ゼミでの発表の様子

現在は、上記の過程を踏まえ、7月末に行われる前期活動の成果発表会に向け、個々人のテーマや敷地の設定と情報の整理、そしてそこから導かれる問題点等についてエスキスを行っています。テーマや敷地は様々ですが、ある一人が気になることを掘り下げていくことで、共有できる問いに行きつき、その中から建築や都市、モノで提案できる事柄を見つけようとしている最中です。始まりは身近なことからで良いのですが、その先は、すぐに到達できる問いではなく、なるべく射程の長い問いかけを見出してほしいと考えています。少し余談になりますが、学生さんの敷地(や出身地域)を地図で見ていると、色々な場所がありそれぞれに特徴があって面白いなあと、しばしエスキスを忘れ見入ってしまいます。今年度、偶然ですが出身地が近接する地域の学生さんがいました。どちらも山あいのまちなのですが、山による囲われ方・山との距離感が異なるためにまちのつくられ方や生活のあり方が異なるようで、面白いなと思って聞いていました。一度訪れてみたいものです。

以上となります。ありがとうございました。

建築学部建築学科 准教授 人見将敏 

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