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建築学部

1年生「建築設計基礎演習Ⅰ」の授業を紹介します。

こんにちは。伝統建築領域の砂川と申します。私からは建築学部建築学科1年生の授業をご紹介させていただきます。前期では、設計製図の基礎となる線の引き方やパース、図面の描き方を学びました。この後期からは、建築設計のプロセスや建築表現の方法を学んでいます。授業は計3課題から成ります。ここでは第1課題を紹介します。第1課題におきまして1年生には、茶室建築の観察を通じて、伝統的建築物の意匠や空間構成の基礎的な理解を試みてもらいました。

観察の対象となる茶室は、重要文化財に指定されている茶室、傘邸と時雨亭(かさてい・しぐれてい)です。建物は高台寺境内の見晴のよい所にあります。2棟の茶室は廊下でつながれています。建築的に注目されるのは炉を切らず、カマドを構えた開放的な茶室としている点です。すなわち躙口(にじりぐち)のある閉鎖性の高い4畳半の茶室とは趣を異にしているところに特徴があります。

まず1年生には、かつて大工が茶室を造るにあたって作成していた「茶室おこし絵図」を用いて、紙模型をつくってもらいました。

「茶室おこし絵図」の組み立て作業

絵図には爪が付いており組み立てることができます。大工はこうした模型を用いて茶人と共同で茶室を建てていたと考えられています。どのように立体的に建築物を構想したか。工匠の思考プロセスを体験できたかもしれません。

それから、学校から歩いて高台寺までやってきました。見学を通じて実物の茶室の大きさ、茶室(数寄屋造り)の技法、素材感や、傘邸・時雨亭にみられる特有の構造、構成を観察します。

高台寺傘亭・時雨亭の見学(中央に見える2階建ての茶室が時雨亭)

最後に図面を作成して提出してもらいます。まず平、断、立面の各図面を丁寧にトレースする(写す)ことで空間構成、建物の構造や寸法を理解します。

次にこのトレース図面に着彩します。茶室は自然な素材にあふれています。土間の三和土(たたき)とサビの出た土壁、数寄屋らしい磨き丸太と皮付き丸太、草葺と檜皮葺(ひわだぶき)の屋根などのそれぞれに素材の違いがあります。また突き上げ戸、連子窓(れんじまど)、下地窓など形式の異なる開口部や庇が明暗をつくっています。着彩では、こうした素材の違いや陰影のある空間構成を表現できると良いかと思います。

図面トレースの様子
着彩作業の様子

一部ですが優秀な作品を掲載させていただきます。

 

1年生は、限られた時間で、もくもくとトレースに取り組んでいました。前期からの製図演習が活きていたと思います。仕上がった作品には、おのおのの観察の結果が表れているようです。自由な遊び心にあふれた茶室の観察は、伝統的な日本建築の空間や技法を知る良い機会となったのではないでしょうか。

これから続いてゆく建築設計に期待しています。最後までお読みいただきありがとうございました。

(文責:砂川晴彦)

いろいろおもしろいものが出来上がっています!
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