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建築学部

「建築デザイン演習I」(2年生)をご紹介します

こんにちは。建築学科教員の宮内です。

今回は2年生の設計演習の様子をご紹介いたします。

エスキスを行う学生と杉本直子先生

「建築デザイン演習I」は、2年生後期の設計演習です。設計演習では、教員の指導のもと学生自ら建物のデザインを考えながら、スケッチや図面と模型の制作を通して、実践的に設計の手法を習います。そのようなプロセスを建築学ではエスキスとも言います。実際の建物はとても大きなものですが、1/100や1/200などの縮尺のスケールで、実際の図面や模型の表現に納まる大きさで、建物のデザインを表現し伝えます。プラモデルやミニカーの世界のサイズです。そのような基本的な作図方法や、模型の作り方はこれまでに既に習得しているので、2年生後期には、より具体的な建物を想定して設計を行うことになります。

ノートPCでBIM作業ができる

特に、作図と立体表現に関しては、BIMといわれる3次元設計のツールを使い始めます。BIM (Building Information Modeling)とはその名の通り、建物のデザインを、コンピューター上で情報データとして、立体的にモデル化することで、そのデータを基に建物の設計図面やイメージを作成します。ゲームの中の世界のようにバーチャルな空間に、できるかぎりリアルな建物を建てているような感じです。映画でも、CGで近未来的な都市が表現されていて、観る人を引き付けることがあります。BIMもそのような視覚化のデジタル・ツールに近いものですが、さらに建物の構造や施工、設備などのエンジニアリングの情報も実装します。

BIMデータと作図を行き来するプロセス

KYOBIでは、今回紹介する設計演習と並行して、積極的にBIM導入のICT演習の授業も行っています。ですので2年生の後期には、学生それぞれが考える設計デザインにおいても、徐々にコンピューターを使った設計を行えるようになります。建築の実務においては、設計者自ら実際の建物を現場で建てることは基本的にありません。建物のデザインの意図を施主に理解してもらい、図面などの設計図書を基に建設業者に建設を行ってもらう必要があるのです。ですので建築設計とは、作図や立体表現を行うことで、その設計の意図をできる限り正確に伝える仕事でもあります。BIMはこれからの設計と建設の現場を担うためのツールでもあります。もちろん設計演習では、手描きのスケッチや模型も重用します。

堀井大継先生の演習グループ、ディスカッションを行う様子

今回取り組んでいる設計課題は、「まちなかの保育園の設計」という課題です。まちなかにあるので、この建物が建設されるまちなみや敷地に馴染んでいるか、保育園として、社会に必要とされる子育ての環境をどのように提供することができるかが課題です。園児にとっては、家庭環境から社会への一歩であるので、明るく楽しい保育園である必要があります。親御さんにとっては、子供が身心ともに健やかに成長する場であることが望まれます。保育園の運営としても、子供と親御さんの生活の一部として、地域と社会に根差した場を作ることが望まれます。ですがそもそも、人が豊かに育つためには、どのような場や環境が求められるのでしょうか?

「まちなかの保育園」の構想

建築家として、そのような場や空間を描くことは容易ではありません。様々な出来事を観察し、よく考え、さらに想像をする必要があるからです。ただ単に建物が機能すればいいのではなく、古きから学び、現代的な文化的・社会的な背景を捉え、より良い未来に向けた建物のデザインに反映する必要があるからです。よって設計者は、設計のための技術的・専門的なスキルだけでなく、自然や環境への理解、教育や社会的な実体験、芸術や科学と文化の素養、そして哲学や思想までもが、素晴らしい建築をつくるために求められます。平凡な仕事がコンピューターに淘汰される時代に、設計者としての人生と考えは、より利他的な主体性とオリジナリティーが必要とされることでしょう。

演習中の様子。遠景に京都タワーを望む

建築を学ぶ学生は、そのような人としての総合的な素養をどこで習得しているのでしょうか?それは大学教育だけに納まるものではないのかもしれません。若い世代の設計者がこれからの世界をどう描いていくかは、教育者として大変興味ありますし、期待するところでもあります。建築家として、主体的に様々な知見を深め経験を積むことが、建築を学ぶことの根底にあることは間違いありません。

准教授 宮内智久

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