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建築学部

建築設計演習IIB(3年生)第一課題「京のメディアテーク」の紹介

建築学科3年生後期の演習「建築デザイン演習IIB」の第一課題「京のメディアテーク:包摂の場としての図書館を設計する」を紹介します。

近年の図書館では従来の印刷物の資料や書籍の収蔵や貸し出しに加えて、インターネットによる情報検索、デジタル媒体の資料や書籍の整備など、情報化が進んでいます。加えて、市⺠活動、世代間の交流、生涯学習の拠点、モノづくり支援などの役割の担う傾向があります。こうした近年の傾向を捉えながら、この課題では「+α」(併設機能)を含む図書館の設計に取り組みました。

場所は京都市左京区、ロームシアターと琵琶湖疏水の向かいにある敷地が計画地です。京セラ美術館や京都国立近代美術館などの主要な文化施設が集まり、人々で賑わう岡崎公園に近く、京都でも魅力のある場所の一つです。敷地西側には町屋や小規模の住居群、細い路地が残る京都の歴史を感じさせる街区があります。

この課題では、図書館と「+α」の機能を持つ建築物を設計することに加え、タイトル、サブタイトルにあるメディア性や包摂性を捉えて行くことも大切でした。また、岡崎エリアの公共建築群や公園、琵琶湖疏水との関連性、敷地西側の古い街区に対する配慮も必要であり、都市的な観点を持つことも必要でした。

課題説明、敷地見学を行い、各種レクチャーを交えながらエスキスを行い、設計が進んでいきました。レクチャーでは「メディアとは何か」、「図書館とメディアテークとの違い」、「図書館の設計上の留意点」、「併設機能を持つ複合施設の設計のポイント」、「最近の文化施設に行けるアクティビティの包摂性」など、課題に関連する事項や事例が取り上げられ、設計や提案のヒントとなっていました。

設計案をいくつか紹介します。

「本棚に手をかければ」では部分的に本棚を貸し出し、物品の販売を行う仕組みを提案しています。全体を通じて本棚がランダムに配置され、それによりできた小空間に様々な役割を持たせています。複雑な空間を上手に図面化し、断面図では書籍や物品が並ぶ本棚と人々の様子を描き、楽しくそうな様子が表現されています。手描きのスケッチ表現が好評でした。

「培われる図書館」では図書館に来館者が手入れできる畑や植栽を提案しています。壁面を斜めにランダムに配置し、そこにできた空間に図書館の諸室や「+α」のアクテビティが配置されています。家具などを丁寧に描いた平面図には楽しそうな様子が感じられ、秋の風景としたドローイングが魅力的です。構造はもう少し整理すると良いでしょう。

「くらしのメディアテーク」では、大きな開架書架と閲覧室に加えて「育」、「学」、「食」など、くらしに関係する身近なテーマを持った小スペースを設けられてあり、閲覧室と閉架書庫の大空間が特徴的です。閉架書庫は壁で閉じられていますが、大閲覧室から存在が感じられるようにするとより良いのではと思いました。パースに疏水と京都の街並みを描いたことが好評でした。

今回の課題では、従来の図書館からメディアテークへと設計を展開することがポイントでした。市民の様々なアクティビティを図書館に内包させることにより、包摂性に応えようとする傾向が見られました。講評会では「バックヤードの充実」や「都市的観点からの外観のあり方」などに関するコメントがありました。私としてはメディアテークが収集するコレクションに関する提案や収蔵や展示に関する意欲的な設計を期待しており、中にはそのような提案もあり、嬉しく思いました。

様々な観点から考え、提案、設計することを求められる課題でした。それらに向き合い、建築設計としてまとめることができたら、大きな成長であると思います。

一方、伝統建築領域では、大学の近くにある「新日吉神社」に赴き、境内の楼門、拝殿、神輿蔵などを対象に実測を行いました。野帳(方眼紙にスケッチを描き、採寸した寸法を書き込んだもの)を取り、それらを基にCAD で製図を行なっています。学生たちは現物を実際に見て、差金を使って尺寸で造られた建物を実際に測ることで、どのように古建築が造られたのかを学んでいます。拝殿の 独立柱の空間は清々しく、外の景色を切り取っていて、大変美しいです。

楼門
拝殿

(准教授 白鳥洋子)

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