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建築学部

白鳥研究室の紹介 2026

こんにちは。建築学科教員の白鳥洋子です。研究室の紹介をします。現在、白鳥研究室には学部4年生8名と大学院生1名が在籍し、設計制作と研究に励んでいます。

ゼミ生の活動

4年生はこの4月に活動を開始し、卒業制作のテーマ検討とリサーチをはじめました。小林律士さんは、治らない病や老いの時間を余白と捉え、「いのちの余白を生きる街」として建築的に提案することを考えています。

小林律士「いのちの余白を生きる街」

4年生は卒業制作のテーマ検討と並行して、ゼミ活動として研究制作を行っています。一つは「プロムナード・プランテ」であり、パリの 廃止された高架鉄道の跡を再利用して作られた緑豊かな遊歩道公園です。1993年に開園し、ニューヨークのハイライン(2009年開園)に先駆けた存在であり、高架公園の先駆的な事例として世界的に高く評価されています。もう一つは、ピエール・ケーニッヒ(コーニッグ)設計の「スタール邸」であり、ロサンゼルスに所在するケーススタディ・ハウスno.22です。鉄構造とガラスの清廉な空間に魅力があり、短手方向の中間梁がないなど、構造に特徴があります。

見学会:大徳寺聚光院

先日は大学院の授業に合流し、大徳寺聚光院に行って参りました。聚光院は戦国武将・三好義継が永禄9年(1566)に養父・長慶の菩提を弔うために創建され、開祖は大徳寺第107世住職の笑嶺宗訴(しょうれいそうきん)です。千利休の菩提寺であり、利休の流れを汲む茶道三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)の墓所があります。

方丈(本堂)には狩野永徳と父・松栄による襖絵全46面(国宝)があります。襖絵は建築に設置されているのが本来の姿であり、その姿を見る貴重な機会となりました。「室中の間(しっちゅうのま)」は欄間や小壁(襖や障子の上にある小さな垂れ壁)、天井が抑制的な意匠であり、狩野永徳の「花鳥図」に集中することができました。磨き上げた床には水面のように襖絵が映っていました。芸術と建築が違いに高め合う感慨深い空間でした。

南の庭園「百積の庭(ひゃくせきのにわ)」は狩野永徳が下絵を描き、千利休が作庭したと伝えられています。一筋の線を描きながら大小縦横の様々な石が並ぶ様子は現代的でした。

聚光院には「閑隠席(かんいんせき)」「枡床席(ますどこのせき)」(ともに重要文化財)の二つの茶室があります。閑隠席は利休の精神を受け継ぎ、三畳の小空間、簡素な意匠、明かりを控えるなど、切り詰めた侘び茶室です。枡床席は、表千家六代・原叟(覚々斎)の好みと伝えられ、四畳半とやや広く、枡床があります。枡床とは茶室の隅に設けられた半畳(正方形)の板の間、踏込床(ふみこみどこ)のことです。枡床席の障子は壊れてしまいそうなくらい細く、繊細で大変美しかったです。水屋は二つの茶室の間に設けられ、両方の茶室から使えるようになっていました。

聚光院には千住博さんの一連の障壁画「滝」が奉納されています。鮮やかな青が印象的であり、宇宙を想起させます。白い水の表現は清らかで優しい輝きがありました。日本の伝統的な色彩の美しさと現代芸術の豊かさをあたらめて感じることができ、日本人であることを嬉しく思いました。

最後に千利休と三千家歴代の墓所にお参りをしました。

この見学会は、関係者の方々のご厚意とお声がけにより、参加することができました。貴重な機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。

卒業研究(制作)・修士研究(制作)

昨年度の卒業研究(制作)、修士研究(制作)では日頃の研鑽が実を結び、たくさんの受賞がありました。飯田安澄さんの「縫い直す風景:野洲川と暮らしのあいだに」は、野洲川沿いに残された古くからある森と廃業した産業跡地に着目し、市民活動の拠点となる建築と緑地を提案しました。破れた衣服を縫い直すように、途切れた風景や地域、人々の関係を丁寧に扱う考え方です。視界を遮る森の木々は、伐採するのではなく、森の向こうに野洲川を感じられることや、森に沿って配置された建物に導かれながら野洲川の川辺に辿り着くことを考えました。飯田さんは国立大学の大学院に進学しています。新しい環境で充実した学業に励んでいることでしょう。

妹背凛花さんの「琵琶湖とまちをつなぐ:再び水と共生するまちへ」は、大きな建物により街から琵琶湖を感じられにくくなっている琵琶湖周辺の街に着目し、ここでは膳所(ぜぜ)を設計対象としました。ピロティや建物の隙間から琵琶湖が見え、湖面から吹く風が街に届くことを考えました。市民に必要な小さなアクティビティを取りまとめ、近隣の諸施設とネットワーク化し、琵琶湖に接する機会を増やす提案も良かったです。2人とも入選を受賞しました。おめでとうございます。

飯田安澄 卒業制作「縫い直す風景:野洲川と暮らしのあいだに」(入選)
妹背凛花 卒業制作「琵琶湖とまちをつなぐ:再び水と共生するまちへ」(入選)

藤井幸正さんの修士研究(制作)「不登校児童生徒のための居場所の提案:モデルケースの試行と場所性の浸透」は、近年増加傾向にある不登校に着目し、日常を過ごす居場所として、フリースクールの提案を行いました。事前研究では、日本の不登校の現状、現在のフリースクールの状況などの把握と分析を行い、さらに、海外の不登校の状況やフリースクールの事例、支援体制を調べ、比較参照を行いました。それらから建築に反映できる「エレメント(要素)」を抽出し、設計に反映し、モデルケースの立案を試みました。ここまでを「モデルケースの試行」とし、周囲の自然や地形から生まれた造形と空間は「場所性」としました。地形から来る高低差を児童生徒の心理的傾向に合うように設計を進め、両者の「浸透」を試みました。

藤井幸正 修士制作「不登校児童生徒のための居場所の提案:モデルケースの試行と場所性の浸透」(優秀賞)
部分模型_1
部分模型_2

久保田智尋さんの修士研究(制作)『建築と芸術の共振:谷を流れる「淡い」』は、故郷の南信州の風景を、実物を見ながらではなく、記憶で描くことに端を発しました。2年間に描いたドローイングは100枚に及び、一堂に並べると、圧感でした。100枚描いたからこそ見える何かがありました。記憶、無意識、偶発性はシュルレアリズムの思考や芸術に近しいものがあり、これに関しても研究を重ね、理解を深めました。最終的には、シュルレアリズムの手法であるオートマティズム(自動記述ここでは描写)、デカルコマニー(転写)を採用しながら、記憶、無意識、偶発性を主題とし、ドローイングを立体に、立体から建築へと変換しました。

久保田智尋 修士制作『建築と芸術の共振:谷を流れる「淡い」』(佳作)

藤井幸正さんは優秀賞を、久保田智尋さんは佳作を受賞しました。おめでとうございます。学科の先生方からは良い助言をたくさんいただきました。感謝申し上げます。

昨年度のメンバーです。昨年度はヴィラ九条山へ行きました。ヴィラ九条山はフランス政府のアーティスト・イン・レジデンスです。ヴィラ九条山では第一線で活躍するフランスのアーティストの作品とアトリエを見学することができます。

研究室のメンバー(昨年度)
ヴィラ九条山:展示を見る
同左:テラスで休憩

皆さんに良いことがたくさんありますように。

(文責:白鳥洋子)

建築学科2025年度 卒業制作 優秀作品発表会 「 Kyobi Archi Selection」 
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