京都は歴史が重なった土地です。悠久の過去そのものが残っているというよりも、激しく「更新」されていながら、同時にその痕跡を強く残している「積層した文化」を有する都市空間です。
建築設計は、土地を評価し、歴史の論脈に載せ、環境に合わせたものを作ることが求められます。こうした歴史認識力は重要なスキルとして評価されます。そこで京都を「生きた教材としてリサーチ」するためにフィールドワークの実践とパンフレット作成を目標とし、「都市や建築の情報整理と紹介」を目指して京都学演習Iを2学年開始時に実施しています。
パンフレットは学生自身が興味をもった都市、建築(時代問わず、庭園なども含める)について、その空間の特質や正しい史実などを軸としてまとめたものを製作します。評価はオリジナリティに加え真実性や著作権を意識した図版の作成、手書きスケッチや写真撮影など複合的なビジュアルセンスをも対象とします。近年には歴史・景観まちづくりなどが全国的に展開され、市民独自の目線で都市や建築、土木や樹木、農地に至る環境評価を行い、地域で守っていくことが始まりつつあります。こうした自分のまちを正確に人に伝えるスキルに対する希求は大きくなる一方です。
演習は一学年を5班に分けて各教員1名ずつが15週にわたって指導します。フィールドワークは引率回と個人回3回、エスキスのセットを各班3回、その他リサーチを随時繰り返して最終プレゼン会に進んでいきます。非常に密なスケジュールですが本学の設計等における特色を裏付ける重要なチャンスともいえるでしょう。またAIを駆使する時代が到来しましたがこうした複雑な成果物には使用が難しく、まだまだ人間の発想力の豊かさに学生も教員も驚かされる課題でもあります。
フィールドワークは個人・自主的に休日等に行っている姿も街角で見かけます。きっと京都を建築の目線で見る楽しみにはまったのではないでしょうか。
フィールドワークで現地確認した建物等はGoogleのマイマップ上にプロットしていきます。今年はQRコードでマップにリンクする学生が増えました。GPSなどを駆使する学生もいて、その技法は目まぐるしく進化しています。これらの情報からチョイスした建物の共通点などを発見して「マップのストーリー」を導いていきます。







現地では、写真を撮り、設計者の意図や周辺環境のありようを思考します。また実測やスケッチのほかヒヤリングまで行う学生もいます。その場で京都の都市と歴史の構造について教員や学生同士で話し合います。高田先生の「引き出し」は京都人ならではのエピソードも多く、非常に参考になります。

現場でも議論しながら進みます。AIに聞くと「ありきたりな回答」が出てきます。「これだったら自分のテーマのほうが面白いね」となるまでに時間は多くかかりません。後半では目つきが違ってきます。


どうしてショッピングモールよりも魅力的なのか?・・・検索しても出てこない答えを必死で考えます。
岡崎フィールドワークの最後はLA VOITUREでアップルパイを食べました!
エスキスでは「点」でしかなかった情報が建築史的、計画論的、地勢的、文学的等々「面的」に再編されていきます。数えきれない個性があふれてくるのを先生方が必死にヒントを与え、学生の個性を伸ばすエスキスを繰り返していきます。友人らと歩くことで生まれたセンスも重要な役割を果たしています。一度のエスキスは学生数1/3ずつ行います。しかしあっという間に時間が過ぎていきます。


イメージが高まると既定の9箇所抽出を超えて、さらに多数の中から絞り出す人も出てきます。しかし比較分析することにより自分の中になかった知識や概念が新たな空間分類にきめ細やかな精度が生まれます。その結果再度街に出て確認しに行く学生も少なくありません。また井上(年)先生や生川先生からは「収集した事物の建築や空間性を中心にした内容を心がけて、カフェ巡りや観光ガイドに留まらないように!」という例年陥りやすい学生の方向性を早めに矯正していただき、徐々にレベルも向上しています。

発表を繰り返していると、人前で話すことにも慣れていきます。
7月の最終週には完成したパンフレットを教室内で展示し、それらをみんなで見て回り、学生投票します。高評価だった作品10点ほどについては、作成者から解説してもらいます。


2026年度は折り方の工夫は少ないものの、空間イメージをグラフィカルに展開してくれたり。さらに漫画的なものや文学的な面白さもあり、進化は目まぐるしいものがありました。








学生本人がここまで楽しみながらオーバードライブする作品を前に、この演習の面白さと難しさを改めて感じました。
中西先生の指導もナイスです!
皆さん、お疲れさまでした。
京都は眺めるだけでなく、自分で歩き、記録し、地図にして初めてわかることもあります。それは建築設計も同じことが言えます。歴史に触れることはいつでもだれにでもできる事ですが、ネット社会が進む中で独自の着眼点や関連性の抽出における「ひらめき」は歩いた人、経験した眼にしか産まれません。そしてこうした調査力は建築のみならず生きて行くうえで最も重要なスキルの一つです。皆さんも一緒にやってみませんか!
文責:北岡慎也




